GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 17 2026.08.24

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年8月17日〜8月23日 Written by Tomo Miyata

今週は、ロボットそのものの話を一本も選ばなかった。

独STILLがWCSの役割を説明している。フォークリフトと物流自動化を手がける会社だ。WCSは、施設のなかの機械に「次はどれをどこへ動かすか」を指示するソフトである。同社はこれを「物流自動化のデジタル神経中枢」と呼ぶ。AGVを数台走らせるだけなら、メーカー純正の管理ソフトで足りる。だが同じ荷物の流れにコンベヤやシャトル式の保管設備が加わると、どのメーカーのソフトも、すべての機械には指示を出せない。機械の間で荷物が待ち、現場が止まる。だからWCSは設備を買ってから足すのではなく、入札の条件に最初から書いておくべきだという。

サプライチェーン実行ソフト大手のInfiosは、AIにどこまで判断させるかを三段階に分ける考え方を示した。たとえば、天候が崩れて入荷が半日遅れたとする。積み替えるか、人員を組み替えるか、そのまま待つか。この判断を誰が下すかという話だ。第一段階では、AIが案を出し、実行するかどうかは人が全部決める。第二段階では「遅れが48時間以内なら自動で処理し、それを超えたら人に知らせる」という基準を人が先に決めておく。第三段階では、その基準の内側でAIが遅れの大きさを見て判断し、必要なときだけ人に知らせる。どの段階でも、なぜそう決めたのかを記録に残す。AIに実行まで任せられるかどうかは、予測の精度よりも、人がどこまで線を引いているか、そしてその理由をあとから確かめられるようにしてあるかで決まる。

米HireArtは、別の問題を指摘する。ロボットを動かす現場要員を派遣している会社だ。5台や10台を決まった環境で動かしているうちは、少人数のチームで足りる。だが拠点が数十に増え、シフトが二交代三交代になり、現場ごとに置き方も動線も違ってくると、仕事の中身が変わる。ロボットを立ち上げる仕事から、毎日たくさんの現場を回して止めない仕事になる。このとき、処理速度だけを評価の指標にすると逆効果になる。手順を省き、異常を報告せずに流した担当者のほうが、数字の上では成績がよくなってしまう。

一方で、ロボットそのものは手に入りやすくなっていく。LG電子とNVIDIAは、ロボットに作業をさせてその動きをデータとして集める専用の施設を年内に動かす。集める量は10万時間。このデータでロボットを動かすAIを鍛える。ベアリング大手の独Schaefflerは、ヒューマノイドの関節に使う減速機の作り方を削り出しから型押しに変えた。製造コストが25%超下がり、同社は2027年から量産に入る。

つまり、賢いロボットも安い部品も、これからは買えば手に入る。そうなると、現場の成果は機械の選定では決まらない。メーカーの違う機械と人の作業に一つのソフトが順番と行き先を指示できるか、そしてAIにどこまで決めさせるかを人が線引きできているか。この二つで決まる。仕組みを持たずに機械だけ増やせば、STILLが書いているとおり、機械の間で荷物が待ち、止まる回数がかえって増える。

GROUNDのGWESは、機械に指示を出すソフトを製品の中心に据えている。あとから他社のソフトをつなぎ合わせたものではない。日本の物流施設は世界でいちばん人手が足りない。扱う品目が多く、複数の作業の流れが同じ場所で入り混じる。だから、この仕組みがあるかないかで生産性が変わると考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
青い照明の管制室に並ぶ監視コンソール
施設のなかの機械に、次はどれをどこへ動かすかを指示するソフトがWCSである。Photo: Unsplash

WCS・物流OSドイツ/欧州

STILL —「WCSは物流自動化のデジタル神経中枢である」

フォークリフトと物流自動化システムを手がける独STILLが、自動化された物流施設で使うソフトの役割分担を整理した。親会社のKIONグループは産業車両の世界大手で、WMSと自動化システムのDematicも傘下に置く。STILLはソフトを三つに分ける。何がどこにいくつあるかを管理するWMS。受けた注文をどの順番でどう作業に割り振るかを決めるWES。そして機械に直接指示を出すWCSである。WCSがやるのは、どの経路で運ぶかを決めること、不良品を見つけること、機械同士をぶつけないこと、そして止めるか動かすかを判断することだ。同社はWCSを「マテリアルフローのペースセッター」(荷物の流れの速さを決める役)と位置づける。

やり取りするデータは多い。シャトル式の設備は、荷物を1回運ぶ指示ごとに数百件の状態と位置を送ってくる。AGVの群れは中央のソフトと位置情報を絶えず交換する。AGVだけならメーカーの管理ソフトで動く。だが、その管理ソフトが指示を出せない機械が同じ流れに入った時点でWCSが要る。メーカーの違うAGVを一つにまとめるには、独自動車工業会(VDA)などが作った共通の通信規格VDA 5050に合わせた上位のソフトを使う。ただし台数とデータが増えれば、それでも対応しきれなくなると同社は書いている。

WMS・WES・WCSを一つにまとめれば、システムのつなぎ目が減る。データの置き場が一つになるので状況も見えやすく、関わるシステムと会社の数も減る。「WCSは物流自動化の“デジタル神経中枢”だ。コンベヤ、ロボティクス、そして人のやりとりを、リアルタイムにオーケストレーションする」と、同社で自動化イントラロジスティクス事業の営業・エンジニアリングを率いるJohannes Funke氏は述べる。

出典 Logistics Business / 2026.08.18

回路基板上で光るAIチップ
Photo: Unsplash
02

エージェンティックAI欧州

Infios — AIにどこまで判断させるかを3段階に分ける「Graduated Autonomy」

独の産業コングロマリットKörberと米投資会社KKRが設立したサプライチェーン実行ソフト会社Infiosへのインタビュー。同社はWMSや輸送管理をまとめたソフトを70カ国・5,000社超に納めている。答えたのはイノベーション責任者のEugene Amigud氏だ。同氏は、AIを入れて失敗する一番の理由は「信頼されないこと」だと言う。現場が信じていないシステムに、判断は渡せない。だから小さく始めて、任せる範囲を少しずつ広げる。状況を捉え、判断し、実行し、結果を学び、また捉える。この繰り返しで信頼を積み上げる考え方をGraduated Autonomyと呼ぶ。

Assistedでは、AIは案を出すだけで、実行するかどうかは人が全部決める。Automatedでは、たとえば「遅れが48時間以内なら自動で処理し、それを超えたら人に知らせる」という基準を人が決めておく。Autonomousでは、その基準の内側でAIが遅れの大きさを見て判断し、知らせ方も自分で決める。「ダッシュボードは見た目こそ美しいが、情報を映すだけで何も動かさない。有用性は限定的だ」と同氏は言う。どの段階でも記録は残る。なぜそう決めたのか、どの条件を考え、どれを考えなかったのかが後から追える。

出典 Logistics Business / 2026.08.20

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
03

論考運用・組織米国

「ロボットは自ら動かない」— 拠点を増やすと人の体制が先に詰まる

The Robot Report掲載の論考。筆者は米HireArtの共同創業者兼社長Christopher Bower氏。同社はニューヨークを本拠に、契約社員の採用と雇用の代行を手がける。ロボットを動かす現場要員を送り出している立場からの話だ。試験導入から本格展開に移るとき、行き詰まる原因はロボットではないという。動かし、保守し、やり方を改善し続ける人の体制のほうだ。台数が5台から10台で、環境も整っているうちは、技術者と熟練の担当者が数人いれば回る。だが拠点が数十に増え、シフトが複数になり、現場ごとに置き方も動線も違ってくると、仕事の性質が変わる。製品を立ち上げる仕事ではなく、たくさんの現場を毎日回して止めない仕事になる。

生まれている職種は、ロボットの操作担当、現場の保守技術者、遠隔で操作する担当、動作を検証する担当、データを取る担当。どれも開発と現場の間に立つ役で、想定外のことが起きた理由を読み、失敗を記録に残し、現場で起きたことを開発に返す。ここで速さだけを評価すると逆効果になる。手順を飛ばし、異常を報告せずに流した担当者のほうが、数字の上では成績がよくなってしまう。それよりも見るべきなのは、手順を守ったか、記録の質はどうか、異常を上に上げる判断が正しかったか、迷ったときに安全側に寄せたかだと同氏は言う。

出典 The Robot Report / 2026.08.22

黒い背景の前に立つ白いヒューマノイドロボット
Photo: Unsplash
04

Physical AI韓国/米国

LG電子 × NVIDIA — ロボットの動作データ10万時間を集める施設を年内稼働

LG電子が、ソウルの良才(Yangjae)に建てているロボットデータファクトリーを年内に本格稼働させる。ロボットに作業をさせて、その動きをデータとして集める専用の施設だ。同じ年内に10万時間ぶんを集める計画だ。休みなく動かし続けて12年近くにあたる量である。施設のなかには住宅を模した部屋と、米テネシー州の洗濯機工場の作業を再現した区画がある。さらに、LGグループのITサービス会社LG CNSが売る物流自動化の設備を置いた区画と、電子部品を手がけるLG Innotekのロボットハンドを試す区画も設ける。

同社の家庭用ロボット「CLOiD」が各区画で作業してデータを生む。集めたデータはNVIDIAの技術で数を増やし、足りない場面は合成して補ってから学習に回す。狙いは、周りを見て、指示を理解し、実際に手を動かせるAIを鍛えることだ。現地を訪れたのはNVIDIAのMadison Huang氏(omniverse・robotics担当シニアディレクター)だ。その4日前には、LGグループのKoo Kwang-mo会長とJensen Huang氏がサンタクララで、Physical AI・AIインフラ・モビリティの協業を広げる覚書を結んでいる。

出典 The Korea Herald / 2026.08.18

産業用機械が並ぶ工場の生産ライン
Photo: Unsplash
05

サプライチェーンドイツ

Schaeffler — ヒューマノイド用の減速機を削り出しから型押しに変え、2027年量産

ベアリングなど機械の部品を作る世界大手で、自動車向けを主力とする独Schaefflerが、ヒューマノイドの関節に使う波動歯車の大規模な検証を終えた。2027年から量産に入る準備が整ったという。波動歯車は、小さいのに大きく減速でき、たわみにくい減速機で、関節を動かすアクチュエータの中心にある部品だ。そのアクチュエータが、ヒューマノイド1台の製造コストの約半分を占める。従来は金属を削って作るため、時間も設備投資もかかった。同社はこの作り方を「ヒューマノイドを量産規模に乗せる際の主要なボトルネックになり得る」と見ていた。

新しい作り方は、強い力で押して数秒で目的の形にする。伝えられる力と効率は削り出しと同等のまま、製造コストが25%超、材料の使用量が75%超減る。分単位だった工程が秒単位になる。同社は自動車向けに、この作り方の波動歯車を過去10年で200万個超納めてきた。生産はまずドイツで始め、その後ほかの地域に広げる。「我々は自社のグローバルなバリューチェーン全体にヒューマノイドを配備しており、要件を一次情報として把握している」と、ヒューマノイドロボティクス責任者のDavid Kehr氏は述べる。

出典 The Robot Report / 2026.08.21

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