GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 19 2026.09.07

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年8月31日〜9月6日 Written by Tomo Miyata

今週は、大手の3PLが、機械をつなぐソフトを自社で持つと決めた話を選んだ。

米Kencoは、全米で約140か所の物流施設を運営する3PLである。同社はテネシー州チャタヌーガの本社にある自動化の試験施設を3倍の約2,790平方メートルに広げ、9月10日に開く。30を超える種類のロボットを同じフロアに並べる。広げた理由は、装置を一台ずつ評価しても、組み合わせたときに何が起きるかがわからないからだ。最初に公開するのは、トレーラーからパレットを降ろし、施設の奥へ運び、ケースを一つずつ降ろすまでをつないだ作業で、指示はGray Matterのソフトが出す。特定のメーカーに寄らない方針で運営するという。メーカー各社の提案を突き合わせて確かめる作業を、買う側が自前でやると決めたということである。

韓国のCJ大韓通運は、ヒューマノイド2台を実際の梱包工程に入れた。ハードウェアはRobotis、ロボットハンドはAidin Roboticsから買う。一方で「ロボット基盤モデル(RFM)」と呼ぶ制御ソフトは、自社の作業データを使って開発している。契約物流の専業では世界最大のGXOは、9月3日に技術部門を二つに分けた。基幹システムを守る側と、AIとロボットを現場に入れる側で、担当役員を分けている。

三社に共通しているのは、どの機械を買うかという話ではない点だ。機械と機械のあいだ、機械と人のあいだをどうつなぐかを、外注せず自社の能力として持つと決めている。メーカーが統合まで面倒を見てくれるという前提を、買う側が降ろしたということだと私は読んでいる。

そう判断できるだけの材料は揃ってきた。ポーランドのNomagicは、蓋が載っているだけで扱いにくかった靴箱を、約98%の品番で1時間あたり最大450箱まで扱えるようにした。個別の難所は一つずつ解ける。一方で英Dexoryは、WMSやERPが持っているのは取引の記録であって、いま現場で何が起きているかではないと書く。パレットは読み取られたあとに動かされ、保管場所は一部だけ埋まる。機械が増えるほど、記録と現場の差は大きくなる。装置は買えるが、装置を動かす前提になる現場の状態は、買っても付いてこない。

ここから先は、日本の事業者にとって楽な話ではない。KencoもCJもGXOも、自前で作れる規模がある。同じことを自社でやれる会社は、日本にそう多くない。だとすれば、機械の間に順番と行き先を指示するソフトを、製品として買えるかどうかが分かれ目になる。GROUNDのGWESは、この指示を出す機能を製品の中心に据えて作ってきた。他社のソフトを後からつなぎ合わせたものではない。多品種で、複数の作業の流れが同じ建屋を通る日本の物流施設ほど、この差は出ると考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
自動化機器が並ぶ大規模な物流施設の内部
Kencoは自動化の試験施設を約930平方メートルから約2,790平方メートルに広げ、30を超える種類のロボットを同じフロアに並べる。Photo: Unsplash

物流OS・オーケストレーション米国

Kenco — 試験施設を3倍に広げ、30を超える種類のロボットを組み合わせた状態で検証する

米Kencoが、テネシー州チャタヌーガの本社にある自動化の試験施設(Innovation Lab)を、約930平方メートルから約2,790平方メートルへ広げる。開所式は9月10日。12を超える分野の技術にまたがる、30を超える種類のロボットを置く。同社は荷主から物流拠点の運営を請け負う3PLで、全米で約140か所の物流施設を運営し、そこで使うフォークリフトのリースと保守も引き受けている。試験施設は2015年に開設したものである。

広げた狙いは、単機能の装置を一台ずつ評価するのをやめ、複数のロボットを組み合わせた状態で検証することにある。自動化・イノベーション担当バイスプレジデントのAinsley Williams氏は「930平方メートルでは、単機能の装置と技術だけですぐに埋まってしまう。もっと広ければ、複数の技術が組み合わさって動くところを試せると考えた」と述べる。パレットにケースを積む、あるいは降ろすロボットは、一台で以前の試験施設をほぼ埋めていた。広くなったことで、通路を上下しながら在庫を数える設備のように、高さ方向を使う技術の検証もできるようになる。この検証を加えたのは、床面積の確保が難しくなり、高い位置まで使う自動化に業界が向かっていることを受けたものである。

最初に公開するのは、トレーラーからパレットを降ろし、施設の奥へ運び、ケースを一つずつ降ろすまでを一つの流れにした作業である。これらにGray Matterのソフトが指示を出す。フロアにはAutoStoreの自動保管設備と、GrayOrangeのHiCLiMEも並ぶ。Williams氏が特に効果が大きいと挙げたのは、順番の決まっていない複数品目を一つのパレットに積む作業だ。いまパレットにケースを積むロボットは、ケースが決まった順番で流れてくることを前提にしている。自動保管設備と組み合わせるならその前提は成り立つが、3PLの現場ではまず成り立たない。この前提を外せれば、70,000平方メートルを超える物流施設でもパレット積みを自動化できるという。同氏は、試験施設を特定のメーカーに寄らない方針で運営するとしている。「ラボで失敗した試験は、ラボにとっては成功した試験だ。失敗するところを見たかったのだから。それがラボの目的であって、本番の目的ではない」

出典 FreightWaves / 2026.09.03

黒い背景の前に立つ白いヒューマノイドロボット
Photo: Unsplash
02

ヒューマノイド実装韓国

CJ大韓通運 — ヒューマノイド2台を実際の梱包工程に入れ、制御ソフトは自社で開発する

韓国のCJ大韓通運が、京畿道龍仁市ヤンジにある化粧品販売Olive Young向けの物流センターに、ヒューマノイド2台を投入した。作業は梱包工程で箱に緩衝材を入れることである。同社によれば、実際の物流工程でヒューマノイドを使うのは今回が初めてとなる。前年に群浦のフルフィルメントセンターで実施した試験を、日々の作業に移した形だ。同社は、実際の作業で得たデータを、ロボットの精度と反応を上げるための学習材料として使うとしている。

同社は、決められた作業に特化した固定式の自動化設備との違いを二点挙げている。人が作業するために作られた空間でそのまま働けること、商品や注文が変われば別の作業に移せる可能性があることである。制御は自社の技術を使い、物流の作業データから「ロボット基盤モデル(RFM)」と呼ぶソフトを開発している。RFMはロボットの頭脳にあたる。カメラとセンサーの情報に模擬データを合わせて学習させることで、初めて見る商品や作業環境でも、ロボットが周囲を認識して動き方を決められるようにする。

同社は今後、ピッキング、仕分け、検品、梱包へヒューマノイドの用途を広げ、最終的には1台で複数の工程をこなすことを目指すとしている。技術面では、ハードウェアはRobotis、ロボットハンドはAidin Robotics、RFMはRealWorld AIと組んで開発する。人の手に近いロボットハンドの開発や、物流の自律運用に関する政府主導の事業にも参加している。

出典 The Korea Times / 2026.09.03

青い照明の管制室に並ぶ監視コンソール
Photo: Unsplash
03

組織・技術戦略米国

GXO — 技術部門を基盤と加速の二つに分け、新設のCIOと既存のCTOに別々に持たせる

契約物流の専業では世界最大のGXO Logisticsが9月3日、技術部門の組織を広げると発表した。新設した最高情報責任者(CIO)にBalaji Rangaswamy氏が着任し、最高経営責任者のPatrick Kelleher氏の直下に入る。同社は技術部門をFoundation(基盤)とAcceleration(加速)の二つに分けて運営する。

CIOのRangaswamy氏が担当するFoundationは、事業規模の拡大を支える基幹システム、全体構造、中核技術を対象とする。具体的には、情報戦略、情報リスク、データの管理、情報セキュリティ、障害からの復旧、サービス運用を含む。最高技術責任者(CTO)のNizar Trigui氏はAccelerationを担当し、自社の運用ソフトGXO IQの展開、エージェンティックAI、Physical AI、ロボットなど、サプライチェーンの運用を変えうる技術を扱う。

Kelleher氏は「会社と技術面の目標が大きくなるにつれ、拡張でき、障害に強い技術の基盤を作ることと、新しい技術の導入を速めることの二つに焦点を絞ってきた。この二つは深くつながっている」と述べ、Trigui氏が新技術を担い、Rangaswamy氏が大規模なシステム刷新の経験をもとに基盤を担うと説明している。

出典 GlobeNewswire / 2026.09.03

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
04

論考データ基盤英国

Dexory — 記録と現場の差が、自動化の効果を止めている

英Dexoryの共同創業者で商品責任者を務めるOana Jinga氏の寄稿。同社は物流施設内を自走して棚の在庫を読み取るロボットと、読み取った情報を見せるソフトを手がける。同氏は、移動ロボット、自動保管設備、AIを組み込んだWMS、先進的なピッキング技術が入っても、多くの物流施設が古い情報のまま運用の判断を下していると書く。在庫は絶えず動く。パレットは移され、保管場所は埋まっては空き、混み合う区画では滞留が起きる。システムがその変化を記録した時点で、現場はすでに次の状態に移っている。

WMSやERP、自動化設備は大量のデータを生むが、その多くは取引の記録であって現場の状態ではない。パレットは、読み取られたあとに別の場所へ動かされる。保管場所は一部だけ埋まっている。在庫が違う場所に置かれることもあれば、記録そのものが誤っていることもある。自動化が増えるほど、システムが認識している状態と実際に起きていることの差は大きくなる。自動化設備は与えられた入力に従って動くため、入力が古ければ、実態と異なる状態を前提に最適化してしまう。

AIについても同じことが言えると同氏は書く。需要予測、保管場所の割り当て、要員計画にAIを使っても、在庫の記録や施設内の状況が実際と違えば、出てくる推奨も実際と合わない。AIの効果は入力の正確さに直結する。測る指標についても、ピッキング数、在庫精度、処理量といった従来の指標に加え、一日のなかで変化する施設全体の状態を示す指標が要ると述べている。定期的な棚卸しや個別の調査に頼るのではなく、保管能力が逼迫している場所、繰り返し起きる滞留、空間の使われ方を、常に更新される形で見る。出荷に影響が出る前に異常を見つけることも挙げている。

出典 Logistics Business / 2026.09.02

産業用機械が並ぶ工場の生産ライン
Photo: Unsplash
05

Physical AIロボットピッキングポーランド

Nomagic — 蓋のずれる靴箱を約98%の品番で扱い、1時間あたり最大450箱を処理する

AIによる認識で対象物を掴むロボットを手がけるポーランドのNomagicが、靴箱専用のピッキング装置を示した。同社の事業開発担当Oscar Cutts氏によれば、ファッションのEC出荷では扱う品物の約20%を靴箱が占める。パレット、カートン、規格化されたコンテナの扱いは自動化が進んだが、靴箱は自動化されずに残っていた。

靴箱は一見ロボットに向いている。角があり、大きさもおおむね揃っていて、衣類ほど形が崩れない。だが密封されたカートンと違い、多くの靴箱は身と蓋の二つに分かれ、蓋は載っているだけである。蓋の重なり方、箱の向き、身と蓋の間の摩擦が少し違うだけで、扱っている途中に蓋がずれたり外れたりする。物流施設では数百種類の意匠、寸法、素材の靴箱を扱い、在庫は一日のなかでも入れ替わる。ゴムバンドで留めれば、吸着式のグリッパーがどの面からでも持ち上げられる。だが同社の試験と調査によれば、主要な靴メーカーと小売は、バンドが開封時の体験とブランドの評価を損なうと判断し、配送を請け負う側に使用を禁じている。

同社のShoebox Pickerは、AIによる認識と専用のアーム先端部(エンドエフェクタ)を組み合わせ、靴箱ごとに寸法、蓋の位置、向きを評価して掴み方を変える。画像認識が対象物の三次元形状を再現し、大きさと向きを推定したうえで掴み方を計画する。機械学習のモデルが掴み方を決め、触覚のセンサーが掴めたかどうかを確かめる。想定と違えば、失敗して止まるのではなく、状況を見直して動きを変える。同社によれば約98%の靴箱の品番を扱え、処理量は1時間あたり最大450箱に達する。

出典 Logistics Business / 2026.09.03

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