GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 20 2026.09.15

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年9月7日〜9月13日 Written by Tomo Miyata

今週は、ロボットを何台入れるかという話を3本、入れた後に何が効くかという話を2本選んだ。

中国EC大手JD.comの物流子会社JD Logisticsは9月9日、今後5年間でロボット300万台、無人配送車100万台、配送ドローン10万台を調達すると発表した。私が注目したのは、台数よりも、同日に発表されたソフトウェア「Meta Brain 3.0」である。保管、輸送、配送の判断を一つに統合し、数億件の荷物の経路計算を数分から数秒に短縮した。300万台のロボットは、このソフトウェアの指示で動くことを前提に調達される。

欧州でも台数は増えている。ラック昇降型ロボット(ACR)を手がける深圳のHai Roboticsは、欧州のファッション小売が新設する物流施設に1,500台以上を納入する。仏Exotecの営業責任者Arthur Bellamy氏は、米国が外国製ロボットの輸入認可を厳格化したことで、中国メーカーの販路が欧州に向かうと見ている。補助金を受けた低価格品の流入も懸念する。ロボット単体は今後も安く、大量に手に入る。今週の3本はいずれも、この点で一致する。

では、入れた後に何が効くのか。Supply Chain Management Review誌に掲載されたNeal McGuckin氏の論考を選んだ。同氏はAmazonの中東・北アフリカ事業と英航空貨物会社IAG Cargoで実務を担った人物である。Amazonのロボット稼働台数は、2012年のKiva Systems買収を経て2025年に100万台を超えた。同年に導入した「DeepFleet」は、ロボット群の走行順序と経路を決めるAIである。機械を1台も増やさずに、走行効率を約10%改善した。100万台に達してなお残った最大の制約は、機械の性能ではなく、機械同士の動きの調整であった。

同氏の結論は、自動化には順番があるということに尽きる。まずトートやパレットの規格を揃え、作業を測定できる単位にする。次にその規格に合わせて搬送を自動化する。続いて変動の少ない工程を一つずつ機械化し、最後に全体へ指示を出すソフトウェアを導入する。設備を先に買えば、機械の間で荷物が滞留し、例外対応が監督者の処理能力を超える。正しい情報があれば手作業でも回る状態を作ってから自動化しなければ、欠陥がそのまま固定される。業務を整えないまま自動化することを、同氏は「automating the mess」と呼ぶ。

この順番は、GROUNDが物流施設の業務成熟度を測るGPIMの5段階と一致する。第1段階「体系化」で作業の手順と単位を揃える。第2段階「可視化」で進捗、実績、在庫、作業量予測を数値で把握する。第3段階「自動化」で定型作業を機械とシステムに移す。第4段階「最適化」では、在庫配置、動線、人員、配送をAIと数理最適化により決める。第5段階「自律化」で全体が人の判断を待たずに動く。同氏の言う規格の統一は体系化、情報の整備は可視化、工程ごとの機械化は自動化、DeepFleetは最適化に相当する。同氏が指摘する失敗は、第1・第2段階を飛ばして第3・第4段階の設備を買うことである。GROUNDが設備を提案する前にしかるべき段階を踏むのは、この省略を防ぐためである。

買い手の基準も変わっている。Apple出身のHamza Derbas氏が2024年に創業した米Maven Roboticsは、9月10日に1億ドルを調達した。車輪付きの台に2本の腕を備えたロボットが、店舗別の混載パレットを組む。大手消費財メーカーの選定では、既に製品化していた競合4社を退けて受注した。同氏が説明したのはロボットの性能ではなく、業務の範囲である。「ロボット単体の課題を解くのではない。WMSに接続し、トラックに荷物が載るまでを引き受ける」と同氏は述べた。現在は8台が1日16時間動き、稼働率は99%を超える。

日本の物流施設に当てはめて考える。ロボット、部品、学習データは今後も安く手に入る。差がつくのは二点である。メーカーの異なる機械と人の作業の双方に、一つのソフトウェアが順番と行き先を指示できるか。AIにどこまで判断させるかを、人が線引きできているか。この指示を出すソフトウェアなしに機械を増やせば、先に述べた滞留と停止が起きる。GROUNDのGWESは、この指示機能を他社ソフトウェアへの後付けではなく、製品の中核に据えている。人手不足が深刻で、多品種の荷物が同じ建屋で混流する日本の物流施設では、この機能の有無がそのまま生産性の差になると私は考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
自動化機器が並ぶ大規模な物流施設の内部
JD Logisticsは5年間でロボット300万台を調達し、保管・輸送・配送の判断を一つのソフトウェアに統合する。Photo: Unsplash

Physical AI物流OS・オーケストレーション中国

JD Logistics — 5年でロボット300万台。保管・輸送・配送の判断を一つのソフトウェアに統合する

JD.comが9月9日に北京で開催した技術イベント「JDDiscovery 2026」で、物流子会社のJD Logisticsがロボットシリーズ「Wolf」を発表した。JD.com技術委員会委員長のCao Peng氏によると、今後5年間でロボット300万台、無人配送車100万台、配送ドローン10万台を調達する計画である。Wolfはピッキング、仕分け、搬送、配送を最小限の人手で担う。マイナス20℃対応の機種や薬局向けの自動払い出し装置も含む。同日発表の「Meta Brain 3.0」は保管・輸送・配送の判断を統合し、数億件の荷物の経路計算を数分から数秒に短縮した

JD Cloudは、実際の作業映像を2年間で1,000万時間分以上収集し、ロボットの学習データとする。GPU設計会社Moore Threadsと共同で、国産チップ10万枚の計算基盤を構築する。JD Propertyは研究開発から保守までを担う拠点「RoboBase」を5年で80か所以上開設し、JD Industrialsはロボット部品で世界最大の供給元を目指す。JD.comグループは約70万人の配送・物流要員を、ロボット保守などの技術職へ再教育する方針である。

出典 South China Morning PostJD Corporate BlogDigitalToday / 2026.09.09

青い照明の管制室に並ぶ監視コンソール
Photo: Unsplash
02

論考物流OS・オーケストレーション米国

Amazonの100万台が示す順番 — 最後に効いたのはロボット群に指示を出すソフトウェアだった

Supply Chain Management Review誌に掲載されたNeal McGuckin氏の論考である。同氏はAmazonの中東・北アフリカ事業と英航空貨物会社IAG Cargoで実務を担った。Amazonのロボット稼働台数は、2012年のKiva Systems買収を経て2025年に100万台を超えた。従業員数120万人に迫る規模である。

同氏は失敗の型を三つ挙げる。工程を測定せずに設備を決めること。制約は情報の流れにあるのに、物の動きを自動化すること。全体を一度に自動化し、一か所の停止が全体の停止につながる構造を作ること。Amazonは作業単位を標準化してから自動化し、その後は仕分け、カートンの積み込み、カートの搬送と工程ごとに機械を加えた。2025年に導入した「DeepFleet」はロボット群の走行順序と経路を決めるAIで、機械を増やさずに走行効率を約10%改善した。結論は、標準化、搬送の自動化、工程ごとの機械化、全体への指示ソフトウェアの導入という順番である。正しい情報があっても手作業で回らない工程を自動化すれば、欠陥が固定される。

出典 Supply Chain Management Review / 2026.09.11

コンベア上を流れる段ボール箱
Photo: Unsplash
03

大型導入自動保管欧州

Hai Robotics — 欧州のファッション小売の一施設に、ラック昇降型ロボット1,500台

深圳のHai Roboticsは、ラックを昇降して箱を取り出すロボット(ACR)を手がける。9月9日、欧州の大手ファッション小売(社名は非公表)が新設するEC向け物流施設に「HaiPick Climb」1,500台以上を納入すると発表した。同方式では世界最大の規模となる。

施設は面積3万平方メートル、保管ロケーションはダブルディープで120万か所、処理能力は1時間あたり24,000トート超である。1,500台を単一の制御システムで運用する。同社の設備は既存の標準ラックに後付けできる。EMEA責任者のPeter Guan氏は「大規模施設では、台数を後から増やせるロボット方式への移行が続いている」と述べた。

出典 Robotics & Automation News / 2026.09.09

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
04

Physical AI資金調達米国

Maven Robotics — 1億ドルを調達。ロボットではなく、WMS接続から出荷までの業務範囲を提案して受注

米Maven Roboticsは9月10日、1億ドルの資金調達を発表した。出資者はRoboStrategy、LocalGlobe、Vine Ventures、XTX Venturesである。創業者兼CEOのHamza Derbas氏はAppleの特別プロジェクト部門に9年在籍し、同部門が解散した2024年に弟のKhalid氏と創業した。ロボットは車輪付きの台に2本の腕を備え、30kgまでの荷物を扱う。

主な用途は混載パレットの組み立てである。工場から単一品目で届いたパレットを、店舗ごとの構成に組み替える。多くの施設では、この工程を作業者が歩いて担っている。大手消費財メーカーの選定でDerbas氏が説明したのは、ロボットの性能ではなく業務の範囲であった。「ロボット単体の課題を解くのではない。WMSに接続し、トラックに荷物が載るまでを引き受ける」と同氏は述べた。既に製品化していた競合4社を退けて受注し、2年後の現在、8台が1日16時間動き、稼働率は99%を超える。調達資金で第3世代機を250台製造する。二足歩行型については「複雑で信頼性が低く、コストがかさむ」として採用しない。

出典 TechCrunch / 2026.09.10

産業用機械が並ぶ工場の生産ライン
Photo: Unsplash
05

規制・市場構造欧州・米国

Exotec — 米国の外国製ロボット規制で、中国メーカーの販路は欧州に向かう

米連邦通信委員会(FCC)が、外国製ロボットの輸入認可を厳格化した。米国で認可済みの欧州製設備がただちに使用できなくなるわけではない。しかし米国に販売する企業は、製造地、部品の調達先、資本構成を問われ、新たなセキュリティ要件に基づく審査を受ける。

仏Exotecは、ラック昇降型ロボット「Skypod」を中核とする自動保管システムを手がける。営業責任者のArthur Bellamy氏は「FCCの枠組みは特定の国を名指ししていない。欧州製というだけで例外扱いになるとは考えるべきでない」と述べた。ドローンの先行規制では、イスラエル、オーストリア、ドイツの企業に条件付き認可が出たが、中国企業には出ていない。同氏は、中国メーカーにとって欧州が相対的に入りやすい市場になると見ている。懸念するのは価格である。国の補助や有利な融資を受けた製品が、欧州企業には対抗できない価格で入ってくる。欧州ブランドの製品でも、開発と製造は中国企業という例がある。欧州も安全性とサイバーセキュリティに加え、補助金、資本、原産地を審査する仕組みを持つべきだと同氏は主張する。

出典 Logistics Business / 2026.09.09

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