GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 21 2026.09.20

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年9月14日〜9月20日 Written by Tomo Miyata

今週は、人の隣で機械をどこまで自律的に動かすかを決める話を軸に5本を選んだ。

米Agility Roboticsが9月15日、ヒューマノイド「Digit 5」を発表した。同社によれば、Digit 5は安全柵なしで人と同じ空間で働くことを前提に設計した最初の機種である。AIと複数のセンサーで周囲の人を検知し、状況に応じて、避ける・止まる・しゃがむのいずれかを選ぶ。次の動作は光と音で知らせ、人が近づきすぎた場合は本体の制御とは別系統の安全制御が作動する。可搬重量は約23kgで前機種比4割増、荷役の高さは約2.2mまで伸びた。90分の稼働ごとに充電は9分で済み、1日20時間超の稼働を見込む。

注目したのは仕様ではなく、安全の担保を機械側の制御で完結させた点である。従来は柵で人と機械を分け、人の動線を設計で縛っていた。Digit 5は、その線引きを機械の判断に移した。最高経営責任者のPeggy Johnson氏は「3年間Digit 4を顧客の現場で動かして得た要求に、そのまま合わせて作った」と述べている。Digit 4はGXO、Schaeffler、Amazon、トヨタのカナダ法人などで65,000時間を超えて稼働した実績がある。

機械をつくる側も量産に入った。中国UBTECHは9月12日、広西チワン族自治区の柳州市で年産1万台超のヒューマノイド工場を稼働させた。面積は14,000平方メートルで、10分に1台の組み立てを想定する。同一ラインで複数機種を作る方式を採り、荷降ろしや部材供給はヒューマノイド自身が担う。1台あたり2,000本を超えるネジの締結は協働ロボットが行う。供給の体制は整いつつある。

では、どこから手を付けるのか。Gartnerは9月17日、物流施設のAIを四つの段階で整理した。第一が従来型の最適化の高度化、第二が業務手順や例外対応の文書をその場で生成する生成AIである。第三は人の監督下で複数工程を推奨・部分実行するAIエージェント、第四は実際に荷を扱うフィジカルAIである。Gartnerは、要員予測や保管場所の割り当てなど実績のある用途から始め、順に広げるよう勧めている。

この四段階は、GROUNDが物流施設の業務成熟度を五つに分けて測るGPIMと対応する。Gartnerの第一・第二段階はGPIMの第2段階「可視化」と第4段階「最適化」に、第四段階のフィジカルAIは第3段階「自動化」にあたる。第三段階のエージェントだけが、GPIMの第5段階「自律化」の手前に位置する。重要なのは、Gartnerがこの第三段階に人の監督という条件を付けたことである。Digit 5が安全制御で引いた線と同じものを、Gartnerはソフトウェアの側にも求めている。どこまで機械に決めさせるかを人が決める。GPIMの第4段階と第5段階を分けるのは、この線引きである。

線引きの前に、確かめる場も要る。中国Geekplusは9月17日、デュッセルドルフに欧州初の試験施設を開設した。開所式にはGXO、DSV、LPP Logisticsなど150名超が参加した。パレット単位から棚単位までの搬送方式、ヒューマノイド、制御ソフトウェアを一か所で比べられる。導入前に方式を突き合わせる場を、供給する側が用意し始めた。

日本の物流施設に当てはめて考える。柵なしで20時間働く機械は、数年内に調達できるようになる。だが機械が増えるほど、決めるべきことは増える。メーカーの異なる機械と、人の手作業。この両方に一つのソフトウェアが順番と行き先を指示できるか。AIにどこまで判断させ、どこから人が引き取るかを、工程ごとに線引きできているか。GROUNDのGWESは、この指示と判断範囲の設定を、後から足す機能ではなく製品の中核に据えている。人手不足が深刻で、多品種の荷物が同じ建屋を流れる日本の物流施設では、この線引きの精度が生産性の差になると私は考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
黒い背景の前に立つ白いヒューマノイドロボット
Agility RoboticsのDigit 5は、安全柵なしで人と同じ空間で働くことを前提に設計された。Photo: Unsplash

ヒューマノイド実装安全設計米国

Agility Robotics — 安全柵なしで人の隣で働くDigit 5。判断を機械側の制御に移す

米Agility Roboticsが9月15日、ヒューマノイド「Digit 5」を発表した。安全柵なしで人と同じ空間で働くことを前提にした最初の機種である。AIと複数のセンサーで周囲の人を検知し、避ける、止まる、しゃがむのいずれかを選ぶ。次の動作は光と音で知らせ、人が近づきすぎた場合は本体の制御とは別系統の安全制御が作動する。可搬重量は約23kgで前機種比4割増、荷役の高さは約1.7mから約2.2mに伸びた。90分の稼働ごとに充電は9分で済み、1日20時間超の稼働を見込む。グリッパーは作業別に交換できる。

前機種のDigit 4は主にトートの搬送に使われ、GXO、Schaeffler、Amazon、トヨタのカナダ法人などで65,000時間を超えて稼働した。Digit 5はパレットの荷降ろし、機械への供給、部品の取り集め、出荷前の検品まで用途を広げる。最高経営責任者のPeggy Johnson氏は「3年間Digit 4を顧客の現場で動かして得た要求に、そのまま合わせて作った」と述べた。5月時点の受注残は3億ドル超である。ただし米証券取引委員会への届出によれば、その大半は1社から3年で1,000台の契約で、実現には条件が付く。2025年の売上高は178万ドル、営業損失は1億4,020万ドルで、監査法人は継続企業の前提に疑義を付した。同社は特別買収目的会社(SPAC)と合併し、企業価値25億ドルでの上場を準備している。提供開始は2027年前半、一般販売は同年末の予定である。

出典 GeekWire / 2026.09.15

青い照明の管制室に並ぶ監視コンソール
Photo: Unsplash
02

論考AI適用の段階米国

Gartner — 物流施設のAIを四段階に整理。エージェントは人の監督下に置く

Gartnerが9月17日、物流施設のAIを四つの段階に整理した報告を公表した。実験から実運用への移行を促す要因として、解消しない人手不足、初期投資を抑える調達方式の広がり、AIと自律技術の成熟の三点を挙げている。

第一段階は従来型の最適化の高度化である。規則と統計モデルに頼る段階から、リアルタイムのデータと高度なアルゴリズムを使う段階へ移る。需要予測、要員計画、経路計算、在庫管理が状況変化に追従する。第二段階は業務に組み込む生成AIで、標準作業手順、作業指示、例外対応、判断支援をその場で生成する。第三段階はAIエージェントである。運用データを分析し、複数工程にまたがる作業を推奨または部分的に実行するが、人の監督下に置くことを前提とする。作業割当、例外対応、資源配分が対象になる。第四段階がフィジカルAIで、ピッキング、梱包、仕分け、荷役を実際に行う。Gartnerは、要員予測や保管場所の割り当てなど実績のある用途から始め、生成AIとエージェントへ順に広げることを勧めている。

出典 Logistics Business / 2026.09.17

コンベア上を流れる段ボール箱
Photo: Unsplash
03

大型導入3PLオランダ

GXO — Guess向け拠点にロボット127台。標準構成ではなく顧客の条件に合わせて設計する

契約物流大手のGXOが9月16日までに、オランダ・フェンロの拠点にExotecの自動保管システム「Skypod」を導入し、ファッションブランドGuessの出荷業務を自動化した。処理能力は1日4万〜7万点、繁忙期の最大は1時間あたり2,200オーダーラインである。ロボット127台、保管区画6万か所、作業者に商品を届けるピッキングステーション8台、全長200mのコンベアからなる。

GXOはこの拠点で入荷と品質検査、衣料の仕上げを担い、欧州・中東・アフリカとアジアの店舗向け出荷を行う。ベネルクス向けのEC出荷も加える。GXOとExotecは標準構成をそのまま設置せず、品番数の多さ、季節変動、要求の変化というファッション特有の条件に合わせて設計した。Exotecは装置を納めるだけでなく、保管、ピッキング、搬送を一つの基盤にまとめている。GXOによれば、稼働後は業務の流れが安定し、処理量の見通しが立てやすくなった。

出典 Logistics Business / 2026.09.16

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
04

試験施設Physical AIドイツ

Geekplus — デュッセルドルフに欧州初の試験施設。方式を一か所で比べられるようにする

中国Geekplusが9月17日、デュッセルドルフに欧州初の試験施設を開設した。開所式にはGXO、DSV、LPP Logisticsの担当者やデュッセルドルフ市の第一副市長など150名超が参加した。同社は欧州・中東・アフリカ向けの拠点と位置づけ、年間1,000名超の来訪を見込む。

施設では、パレット単位、トート単位、棚単位で商品を作業者に届ける三つの搬送方式を並べて比較できる。ヒューマノイド「Gino 1」、シャトル式の保管設備「RoboShuttle Hyper」、ロボットアームのピッキングステーション、制御ソフトウェア「Brainsupport」も置く。中核は、長時間にわたる複雑な作業を扱う同社のAI基盤「Gravity」である。欧州・中東・アフリカ統括のHong Yu氏は「作業者と設備の連携からヒューマノイド、制御ソフトウェアまでを一度に見てもらえば、検討の段階から実際の導入まで一気に進められる」と述べた。西欧の営業責任者Rinus Geurts氏は「欧州の顧客が求めるのは約束ではなく、条件がはっきりしていることと、測定できる成果である」と述べた。

出典 Robotics & Automation News / 2026.09.17

産業用機械が並ぶ工場の生産ライン
Photo: Unsplash
05

量産供給構造中国

UBTECH — 10分に1台、年産1万台超のヒューマノイド工場を稼働

中国UBTECHが9月12日、広西チワン族自治区の柳州市でヒューマノイドの量産工場を稼働させた。面積14,000平方メートル、天井高13.8mで、産業用の「Walker S」系列とサービス用の「Cruzr」系列を生産する。ラインは10分に1台の完成を想定し、年産能力は1万台を超える。同一ラインで複数機種を作る方式を採り、生産品目が変わっても設備の大幅な入れ替えを要しない。

工場の作業そのものも機械が担う。荷降ろし、パレット積み、部材供給はヒューマノイドが行い、360度回転する架台と協働ロボットアームがネジを締める。1台の組み立てには、規格の異なるネジが2,000本以上必要になる。搬送は無人搬送車と無人フォークリフトが受け持ち、完成機は自動保管設備へ入る。各機には固有の識別番号が付き、部品の調達元、組立条件、検査記録を追跡できる。同社はこの工場をSiemens Digital Industries Softwareと共同で構築した。通路、作業台、保管区画、搬送経路を実物と同じ配置で再現した模擬環境で物の流れを検証してから、設備を動かした。生産計画と運用管理は、Siemensの基盤上に開発した管理システム「Yanshee MOM」が担う。

出典 Interesting Engineering / 2026.09.14

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