GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 25 2026.10.18

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年10月12日〜10月18日 Written by Tomo Miyata

今週は、マテハンの性能ではなく、マテハンと人に指示を出すソフトの話を軸に5本を選びました。

ハイライトに選んだのは、ドイツの市場調査会社IoT Analyticsの報告書だ。物流施設の中で荷物を移動し、保管し、その流れを制御するための機器とソフトの市場は、2025年に960億ドルだった。同社は、2030年には約1,330億ドルになると予測している。このうちソフトの市場は2025年に63億ドルで、6つの大区分の中で最も速い年平均11.4%で伸びる。ここでいうソフトには、在庫と出荷を管理するWMS、マテハンに「次はどれをどこへ動かすか」を指示するWCS、受けた注文をどの順番でどう作業に割り振るかを決めるWESなどが入る。

同じ報告書は、WMSと自動化設備の間に、メーカーを問わずマテハンに指示を出すソフトが現れていると述べる。背景には、施設を運営する企業が、ロボットを買い足すたびにWMSとの接続をやり直したくないという事情がある。国際物流大手のDHLは、ロボット連携ソフトの米SVT Roboticsのソフトを使い、7か国の施設で新しいロボットを施設のシステムにつないだ。作業は数時間で終わり、SVTの技術者の立ち会いも要らなかったという。人員の配置と在庫の補充の順番を決める施設の管理者の仕事を、AIエージェント(自律的に作業を進めるAI)が引き受け始めていることも、報告書は傾向として挙げている。

マテハンに指示を出すソフトを自社で開発し、その上で動かしている施設が、英国にある。英THG Ingenuityの物流受託事業を担うTHG Fulfilは、スニーカー小売のFootasylum向けに、AutoStoreのロボット85台を使う施設を立ち上げた。AutoStoreは、積み重ねた容器の上をロボットが走り、容器を取り出す自動保管システムで、同名の企業が提供している。THG Fulfilは、着工前に8万回のシミュレーションを行い、ロボットと作業台の数を決めた。施設は9月14日に本稼働した。システムの稼働率は99.8%で、ピッキング作業台の数はFootasylumの従来の運営の半分未満だが、処理量は従来の212%になった。この施設のマテハンに指示を出すWCSは、THG Fulfilが5年かけて自社で開発したものだ。

マテハンを増やしたときに何が起きるかは、Amazonの例が示している。同社のロボットは100万台を超えた。狭い通路を多数のロボットが走るため、渋滞が起きる。同社は、渋滞を事前に予測するAIのモデル群DeepFleetを作って対処している。従業員の健康への影響を調べた研究もある。2025年に学術誌に載った研究は、Amazonの施設の記録を使い、ロボットを使う施設は従来型の施設より、重傷が40%少ない一方、反復動作による軽傷が77%多かったと報告している。共著者の教授は、軽傷が多いのは、ロボットが作業のペースを決めていることが一因だと見ている。

ロボット本体は、購入せずサービスとして借りる契約(RaaS)も含め、今後も手に入れやすくなると私は考えている。AutoStoreは今週、小規模事業者向けに、RaaSでロボットピッキングを提供すると発表した。IoT Analyticsは、報告書の中で、中国のメーカーが価格を下げて欧米に進出しているとも述べる。ロボット本体が手に入れやすくなれば、差がつくのは、メーカーの違うマテハンと人の作業に、一つのソフトが順番と行き先を指示できるかどうかだ。加えて、AIにどこまで判断を任せるかを、施設の運営企業が線引きできているかどうかも差になる。たとえば、トラックの到着が遅れたときに、人員の配置を変えるのはAIなのか、人なのか。この線引きがないままAIを導入すると、問題が起きたときに誰が責任を負うのか、運営企業にも現場にも分からなくなる。

マテハンに指示を出す仕組みがないままマテハンだけを増やすと、荷物がマテハンの手前で待たされ、マテハンが止まる回数も増える。Amazonが、渋滞を予測する専用のモデルを別に作らなければならなかったのは、その一例だ。GROUNDの製品GWESは、物流施設のマテハンと人に作業を指示するソフトを中心に作ってある。他社のソフトを後から組み合わせた構成ではない。日本の物流施設では、人手不足が深刻で、多品種の荷物が混ざって流れる。マテハンと人に指示を出す仕組みがあるかどうかが、生産性の差になると考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
自動化機器が並ぶ大規模な物流施設の内部
物流施設内の設備(イメージ)。Photo: Unsplash

市場調査作業指示ソフトAIエージェント

IoT Analytics — 施設内物流の市場は2025年に960億ドル、大区分ではソフトが年平均11.4%で最も速く伸びる

ドイツの市場調査会社IoT Analyticsは10月15日、「Intralogistics Market and Technology Trends Report 2026」の内容を公表した。施設内物流とは、物流施設や工場の敷地内で、荷物を移動し、保管し、その流れを制御することを指す。市場には、機器、ソフト、通信設備、サービスが含まれる。規模は2025年に960億ドルで、2020年以降は年平均8%で成長してきた。同社は、市場が2030年まで年平均6.7%で成長し、約1,330億ドルになると予測する。報告書は31の製品・サービス区分を対象とし、メーカー、システム構築会社、運営企業への30件超の聞き取りをもとにしている。

最も速く伸びる大区分はソフトで、2025年の63億ドルから、2030年に108億ドル(年平均11.4%)になる。ここには、在庫と出荷を管理するWMS、マテハンへの指示を担うWCS、注文の作業への割り振りを決めるWES、現実の設備を仮想空間に再現して試すデジタルツインのソフト、分析のソフトが含まれる。機器の一部である自律移動ロボットと無人搬送車(AMRとAGV)への支出は、2025年の43億ドルから2030年に84億ドルとほぼ倍増し、年平均では約14%の伸びになる。分析担当者は、中国のメーカーが性能を高め、現地の保守体制を整え、価格を下げていると述べる。施設を運営する企業が挙げる課題の最上位は人手不足で、報告書によれば、ピッキング作業の多い施設では、年間の離職率が200〜300%に達する。

同社が挙げた3つの傾向のうち、2つがソフトに関わる。1つは、人員の配置、在庫の補充、保守の計画といった、施設の管理者が行ってきた判断を、AIエージェント(自律的に作業を進めるAI)が担い始めていることだ。独EPG(物流施設向けのソフト会社)は、3月の展示会LogiMAT 2026で、AIエージェントが人員の割り当てを変え、補充を指示するソフトを発表した。トラックが遅れたときに働くという。もう1つは、WMSと自動化設備の間に、メーカーを問わず使える、マテハンに指示を出すソフトが現れていることだ。物流大手DHLは、米SVT Robotics(ロボット連携ソフトの会社)のソフトを使い、7か国の施設で、新しいロボットを施設のシステムに数時間でつないだ。SVTの技術者の手は借りなかった。報告書は結論の一つとして、運営企業が複数メーカーのロボットを使うようになっていると述べる。そのため、ドイツ自動車工業会(VDA)などが策定した共通通信規格VDA 5050や、メーカーを問わないソフトが、購入の基準になるという。

出典 IoT Analytics / 2026.10.15

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
02

導入事例WCS英国

THG Fulfil — Footasylumの自動化施設が本稼働、半分未満の作業台で従来の212%を処理

英THG Ingenuityの物流受託事業を担うTHG Fulfilは、スニーカー・ストリートウェア小売のFootasylum向けの自動化施設を本稼働させた。THG Fulfilにとって、AutoStore(積み重ねた容器の上をロボットが走る自動保管システム)を外部の小売業者向けに導入するのは初めてだ。この施設は6月に発表され、8月28日に最初の注文を処理し、9月14日に本稼働した。Footasylumにとっては、このシステムで迎える初めての繁忙期になる。

施設は、AutoStoreのロボット85台と9万6,000の容器置き場を備え、販売中の全商品を保管している。THG Fulfilによれば、システムの稼働率は99.8%で、処理量はFootasylumの従来の運営の212%、ピッキング作業台は従来の半分未満だ。着工前に、THG FulfilとFootasylumは、Footasylumの注文履歴、季節ごとの需要、商品データを使って8万回のシミュレーションを行い、ロボットと作業台の数を決めた。

施設のマテハンを制御するのは、THG Fulfilが自社で開発したWCS(マテハンに指示を出すソフト)である。同社は、自社で運営するAutoStoreの複数の施設で運用しながら、5年かけて開発した。本稼働後も、実際の注文データを使って、容器を取り出す順番、注文のまとめ方、在庫の置き場所を改善し続けるという。

出典 FashionNetwork / 2026.10.15

青い照明の管制室に並ぶ監視コンソール
Photo: Unsplash
03

ロボット運用渋滞予測従業員への影響

Amazon — ロボット100万台超、渋滞はAIで予測、ロボット導入施設は従来型より軽傷が77%多いとの研究

米オンラインメディアのArs Technicaは10月12日、米Amazonのロボット運用を報じた。Amazonが運用するロボットは100万台を超える。従業員は150万人超(2025年の年次報告)にのぼる。ロボットの大半は、商品棚を作業者のもとへ運ぶ車輪式の移動ロボットだ。Amazonは、多数のロボットの動きを調整するシステムSequoiaが、入荷した在庫の識別と棚への格納を最大75%速めると説明する。狭い通路を多数のロボットが走ると、渋滞が起きる。渋滞の予測は、別のAIモデル群「DeepFleet」が担う。

増えているのは、荷物を仕分けるRobin、荷物をカートに詰めるCardinal、容器の中身を詰め直すSparrow、触覚センサーを備えたVulcanなどのロボットアームだ。Vulcanは米スポケーンと独ハンブルクの施設で2025年から稼働しており、2027年に導入施設を増やす予定だという。アームの台数は数千台規模で、同社の最高財務責任者は7月の決算説明会で、今年中に倍以上に増やす考えを示した。

従業員の健康への影響については、2025年4月に学術誌ILR Reviewに載った研究がある。研究は、2016〜2019年のAmazonの記録を使い、ロボットを使う施設は従来型の施設より、重傷が40%少なく、反復動作による軽傷が77%多かったとした。共著者であるジョージ・メイソン大学のBrad Greenwood教授は、軽傷が多いのは、ロボットが作業のペースを決めていることが一因だと述べる。Amazonは、2019年以降、全世界で、労災として記録される事故の発生率が43%、休業を伴う事故の発生率が70%下がったと反論している。また、ロボットを使う施設では、保守、設備の信頼性管理、技術を担う職種の人員が、従来型の施設より約30%多く必要になると、記事は伝える。

出典 Ars Technica / 2026.10.12

コンベア上を流れる段ボール箱
Photo: Unsplash
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新製品RaaS保守予測

AutoStore — 小規模事業者向けロボットピッキングと保守予測を、2026年秋の新製品で発表

ノルウェーで自動保管システムを手がけるAutoStoreは10月13日、2026年秋の新製品と新機能を発表した。同社は、自動化した施設でも、サイズの違う商品の扱い、ケース単位とバラ単位のピッキング、保守、在庫の確認、入荷といった場面で、想定外の対応を手作業に頼っていると指摘する。今回の発表は、その手作業を減らす内容だという。

同社は、高さの違う容器を一つの作業台で扱えるFlexBinsPortを、2026年第4四半期に提供する。保管効率は10〜15%上がると見込む。AutoCaseは、業界標準の最大600×400mmのケースに対応し、2027年第1四半期に提供する。複数の作業台で同じ作業のまとまりを並行して処理でき、すでにスウェーデンのNowaste Logisticsと、ノルウェーのKomplettの施設で稼働している。小規模事業者向けのPio Palは、ロボットピッキングを、購入せずサービスとして借りる契約(RaaS)で提供する。梱包作業では1時間に最大540注文明細を処理でき、事前ピッキングを併用すると、作業者を増やさずに処理量が最大3倍になるという。ノルウェーの衣料ブランドFammeがすでに利用している。

保守予測の新機能CubeFleetは、稼働データと保守の基準値をもとに、保守が必要になる時期を事前に知らせ、作業指示まで作成する。同社は、計画外の停止を35〜45%減らせると見込む。生成AIで投資収益を試算するCubeExploreと、AIで設計を補助するCubeStudioも発表した。同社の顧客は68か国で1,300社超、導入したシステムは約2,000件にのぼる。

出典 Business Wire(AutoStore発表) / 2026.10.13

産業用マテハンが並ぶ工場の生産ライン
Photo: Unsplash
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企業買収仕分け設備ドイツ

Symbotic — 独cellumationを買収、荷物の行き先を決めながら運ぶ仕分け設備を手に入れる

AI搭載の物流ロボットシステムを手がける米Symbotic(米ウォルマートの物流施設で自動化設備を提供している)は10月13日、ドイツ・ブレーメンの企業cellumationの買収を発表した。買収額は示されていない。cellumationは、仕分け設備「celluveyor」を開発した会社だ。celluveyorは、荷物をどの方向にも動かせる数百のセル(小さな搬送モジュール)で構成される。各セルは独立して制御される。荷物を運ぶだけでなく、動かしながら行き先を決める設備だという。

Symboticは、従来のコンベアによる仕分けより少ない面積で、処理量を増やし、より多くの種類の商品を扱えるようになると見込む。入出荷のロボットセルの構成を簡素にでき、空いた面積を保管に回せるほか、設備費も下げられる可能性があるという。celluveyorは、郵便、EC、物流の各事業者の施設で使われている。

cellumationは社名を変えず、既存の顧客への販売を続けるほか、Symbotic以外のシステム構築会社にも販売する。創業者のHendrik Thamer氏(最高経営責任者)とClaudio Uriarte氏(最高技術責任者)は、引き続き経営に当たる。SymboticのRick Cohen会長兼最高経営責任者は、これは最近の買収に続く、単独の製品を持つ企業の取得であり、cellumationの設備は直接の顧客にも他のシステム構築会社にも販売し、Symboticのシステムにも組み込むと述べた。

出典 Robotics & Automation News / 2026.10.13

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