GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 26 2026.10.25

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年10月19日〜10月25日 Written by Tomo Miyata

今週は、メーカーの違うロボットと人に指示を出すソフトをめぐり、大手が出資や実装を進めた動きを軸に5本を選びました。

ハイライトに選んだのは、独Körberが同じ独のソフト会社NAiSEに出資した件だ。Körberはサプライチェーン向けのソフトと製造向けの技術を手がける。NAiSEのソフトは、無人搬送車(AGV)、自律移動ロボット(AMR)、人が運転するフォークリフトなどの産業用車両を、メーカーを問わず一つの仕組みで動かす。AGVは決められた経路を走る搬送車、AMRは自分で経路を選んで走る搬送ロボットである。物流施設では、こうした車両や、荷物の搬送と保管をする設備や機器(マテハン)が増えている。

NAiSEのソフトは、背後でどのWMS、WES、WCSが動いていても使えるという。WMSは在庫と出荷を管理するソフト、WESは受けた注文をどの順番でどう作業に割り振るかを決めるソフト、WCSは施設のなかのマテハンに「次はどれをどこへ動かすか」を指示するソフトである。たとえば、A社のAMRとB社のAGVと人が運転するフォークリフトが同じ通路を通るとき、メーカーごとの管理ソフトは他社の車両の位置が分からないため、交差点で互いに譲り合って動けなくなることがある。

ロボットを施設に入れる手間は減っている。物流施設や工場の機器を製造・販売する独KIONは、施設を仮想空間に再現するデジタルツインをAIで強化し、物流大手GXOのエピノワ(仏)の施設で、自律走行車を現地で立ち上げる時間を数週間から数日に縮めた。現地での作業時間は60%以上減った。ロボットアームのUniversal Robotsなどを傘下に持つ米Teradyne Roboticsは、独Sereactと提携した。Sereactは、新しい商品ごとに学習し直さなくても、一つのAIモデルでロボットを動かせるという。スイスのABBは、衣料品を仕分け機に載せるロボットが、稼働中の失敗から自動で学び直す仕組みを加え、立ち上げの工数を最大75%減らせると説明している。

一方で、機器の種類が増えるほど、指示を出す側の仕事は難しくなると私は考えている。ヒューマノイドロボットを論じたLogistics Viewpointsの論考は、ヒューマノイドが働く施設でも、WES、WMS、制御用のソフトが、在庫、人員、設備、輸送の予定を調整する役目を担うと述べる。さらに、勝つのは最良のロボットを作る会社ではなく、ロボットを作業の流れにうまく組み込める会社かもしれないと書く。ただし同じ論考は、ヒューマノイドの費用対効果を示す実測値はまだないとも指摘している。

ロボット本体と、それを動かすAIモデルは、今後も導入の手間が減り、費用も下がると私は見ている。そうなれば、施設ごとの差は、メーカーの違うマテハンと人に、一つのソフトが作業の順番と行き先を指示できるかどうかでつく。加えて、AIにどこまで判断を任せるかを、運営企業が線引きできているかどうかも差になる。たとえば、荷物を運んでいるロボットの前に人が立ったとき、止めるのか、迂回させるのか。この動作を実行するのはロボットの制御システム(RCS)だが、その基準を誰が決めておくのかが定まっていなければ、事故や遅れが起きたときに、責任の所在が分からなくなる。

指示を出す仕組みがないままマテハンだけを増やすと、メーカーごとの車両が互いに連携できず、荷物の待ち時間が延び、車両が止まる回数が増える。Körberも発表のなかで、複数メーカーの車両をまとめて制御する上位のソフトがなければ、車両群は孤立し、効率と拡張性が頭打ちになると説明している。GROUNDの製品GWESは、物流施設のマテハンと人に作業を指示する機能を中核に設計している。他社のソフトを後から組み合わせた構成ではない。日本の物流施設は、人手不足が深刻で、多品種の荷物を同じ施設で扱う。マテハンと人に指示を出す仕組みがあるかどうかが、生産性の差になると考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
物流施設のイメージ
物流施設内の設備(イメージ)。Photo: Unsplash

出資複数メーカーの車両管理ドイツ

Körber — ロボットと車両をメーカー問わず一括管理する独NAiSEに出資

サプライチェーン向けのソフトと製造向けの技術を手がける独Körberは10月22日、独NAiSE GmbHに出資すると発表した。出資額と持ち分比率は公表していない。両社はこれまでも協力しており、今回の出資で戦略的な提携に格上げする。NAiSEは2017年に創業したソフト会社で、これまで外部の資金を入れずに運営してきた。共同創業者のKai Przybysz-Herz氏、Robert Libert氏、Raphael Kusumoto氏が引き続き経営に当たり、既存の提携先との取引も変わらない。

NAiSEのフリート管理ソフトは、AGV、AMR、人が運転する産業用車両を、一つの共通の制御で動かす。同社の施設内物流のプラットフォームは、車両の管理、車両の通行の調整、注文の管理、在庫の管理をつなぎ、メーカーに依存しない。標準化した接続の仕組みを持ち、背後でどのWMS、WES、WCSが動いていても接続できるという。

発表は、自動化が進むと運営企業は複数メーカーの車両群を使うようになるが、上位の制御がなければ車両群がそれぞれ孤立し、効率、見える化、拡張性が限られると説明する。両社は、メーカーを問わない車両管理を、Körberの物流施設向けのソフトと結びつけて提供する。NAiSEは、自社と提携するAGVとAMRのメーカーの機器を、両社に共通の顧客や新規の顧客が使えるようにする。ヒューマノイドロボットを含む新しい用途も開発する予定だが、時期は示していない。Körberの経営委員でサプライチェーン事業を担当するHelena Garriga博士は、「メーカーの異なる車両群のオーケストレーション(統合制御)に取り組むパートナーを得た」と述べる。NAiSEの最高経営責任者Kai Przybysz-Herz氏は、「独立性を尊重するパートナーをあえて選んだ」と述べた。NAiSEは今後も、他のシステム構築会社や車両メーカーとの協業に門戸を開くという。

出典 PR Newswire(Körber発表) / 2026.10.22

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
02

フィジカルAIデジタルツインフランス

KION — 自律走行車の現地での立ち上げ時間を数週間から数日に、GXOの仏エピノワの施設で、AIを使った仮想空間での事前試験を適用

産業用車両と物流自動化で世界大手の独KION(自動化システム大手Dematicも傘下に持つ)は10月21日、NVIDIAの技術会議GTC Berlin 2026で、フィジカルAI(AIが現実の設備を動かす技術)の実運用での成果を発表した。GXOの仏エピノワの施設では、KIONの複数の自律走行車が、人や他の設備と同じ空間で日常の作業に使われている。導入前の試験運用は2026年の初めに行った。

成果の中心はデジタルツインである。デジタルツインとは、現実の施設を仮想空間に再現したものだ。顧客の現地で取得した空間の情報を加え、導入前に、車両の制御ソフトを訓練し、試験し、調整する。KIONによれば、自律走行車の立ち上げにかかる時間は数週間から数日になり、エピノワでの現地の作業時間は60%以上減った。人の近くで自律走行車を安全に動かすための仕組みも、NVIDIAの安全設計の枠組み「Halos」を使って開発した。デジタルツインの構築には、コンサルティング大手のAccentureが協力した。

KIONは、AIのカメラで荷物を識別し、アーム付きの自律走行車両で1箱ずつ取って積む「RoCaP」(ロボット式ケースピッカー)も紹介した。既存の施設にも導入でき、梱包が傷んだ荷物も扱える。独の小売ROSSMANNの施設には2026年10月に納入した。試験運用で速度と把持性能が期待を上回ったため、ROSSMANNは追加の車両を注文した。台数は公表していない。

出典 EQS(KION発表) / 2026.10.21

ロボットのイメージ
Photo: Unsplash
03

フィジカルAI提携返品処理

Teradyne Robotics × Sereact — 1つのAIモデルで未知の商品を扱うロボットアームを、Zalandoの返品処理に展開

ロボットアームのUniversal Robots(UR)と搬送ロボットのMiRを傘下に持つ米Teradyne Roboticsは10月21日、物流向けのフィジカルAIを開発する独Sereactとの提携を発表した。SereactのAI基盤「Cortex」を使ってURのロボットアームを動かし、返品の処理、商品1点ずつのピッキング、店舗への補充といった、定型化しにくい作業を自動化する。Cortexは、画像と言語の指示から動作を生成するAIモデルである。Sereactによれば、新しい商品や作業ごとに学習し直さなくても、一つのモデルがすべてのロボットを動かす。

学習にはNVIDIAのシミュレーション環境Isaac Simを、強化学習にはIsaac Labを用いる。現場のロボットのセル(作業区画)では、NVIDIAのJetson Thorが動作の推論を担う。Teradyne Roboticsは、URとMiRの機器のシミュレーション用データを、NVIDIAのライブラリに提供する。

導入先には、欧州のファッション通販Zalandoの2か所の施設がある。運営は物流大手CEVA Logisticsである。ドイツのグレーフェンとポーランドのシフィエボジンで、ロボットが返品された衣料品を自動で処理している。この2施設への導入は、欧州全体に返品処理の自動化を広げる最初の段階にあたる。Sereactは、返品を素早く再販できる状態に戻すことが、欧州連合の返品商品の廃棄を禁じる規則への対応にもなると説明する。URの双腕のシステムは、欧州の顧客の現場に数百台が出荷されている。Teradyne Roboticsの最高商務責任者Jacob Pascual Pape氏は、「フィジカルAIは、実際の運用で成果を出して初めて意味を持つ」と述べる。SereactのRalf Gulde最高経営責任者は、「1つのモデルがすべてのロボットを動かす」と述べる。

出典 Modern Materials Handling / 2026.10.21

コンベア上を流れる段ボール箱
Photo: Unsplash
04

フィジカルAI再学習衣料品物流

ABB Robotics — 衣料品の仕分け機への投入ロボットに、稼働中の失敗から学び直すAIを追加、立ち上げの工数は最大75%減

スイスの産業用ロボット大手ABBのロボット事業部門ABB Roboticsは、衣料品の仕分け機へ荷物を載せるロボットのモジュール「Fashion Inductor」に、「AI Robot Trainer」を加えた。ABBは、これをカメラ画像を使う産業用フィジカルAIの第1弾と位置づける。Fashion Inductorは、袋に入った衣料品や付属品を1点ずつに分けて、仕分け機に載せる。1セルあたり毎時最大1,300点を処理し、ピッキングの精度は99.5%超を目標とする。Just Styleが10月22日に報じた。

AI Robot Trainerは、衣料品に特化して学習済みの画像認識のモデルと、用途ごとのツールを提供する。これにより、システム構築会社はAIの専門家がいなくても導入と調整ができる。稼働中は、次のサイクルを繰り返す。ロボットの性能を監視し、異常を検知し、新しい学習データを作り、そのセル向けにモデルを学習し直し、改良したモデルをロボットに反映する。ABBは、エンジニアリングと立ち上げの工数を最大75%減らせると説明する。

設備のソフトを仮想空間に複製したデジタルツインが、制御基盤、経路計画のソフト、AI Robot Trainer、設計ツールのRobotStudioをつなぎ、立ち上げを早める。他社のグリッパー(荷物をつかむ部品)の組み込みもできる。ABBは同じ方式を、2027年第1四半期までに、カメラを使う他の用途へ広げる。顧客名、価格、提供時期は示していない。ABB Roboticsのビジネスライン責任者Craig McDonnell氏は、「フィジカルAIは、産業用途でロボットにできることを根本から変える」と述べる。

出典 Just Style(ABB発表を報道) / 2026.10.22

ロボットのイメージ
Photo: Unsplash
05

ヒューマノイド費用対効果論考

Logistics Viewpoints — ヒューマノイドは施設に入り始めたが、費用対効果の実測値はまだないと指摘

物流分野の分析を載せる米メディアLogistics Viewpointsは10月19日、Angeline Fernandes氏の論考を掲載した。論考は、ヒューマノイドロボットが実験室の展示を離れ、運用中の施設に入り始めたが、事業として成り立つかはまだ示されていないと述べる。物流大手GXOは、米Agility Roboticsの二足歩行ロボットDigitに、自動化設備とコンベヤの間でトート(荷物を入れる容器)を運ぶ作業をさせている。Agility Roboticsによれば、Digitは顧客の現場で10万個超のトートを運び、稼働時間は累計6万5,000時間を超えた。論考は、この数字を検証していない。

論考が挙げるヒューマノイドの作業は、トートの移し替え、資材の補充、生産ラインへの部品の供給、トレーラーの荷下ろしの補助、作業台の補助などである。一方、AMRや、棚と搬送機を組み合わせた自動保管設備は、すでに実績があり最適化も進んでいる。論考は、ヒューマノイドの利点を柔軟性とみる。固定設備と人手の組み合わせが必要だった作業を、1台で担える可能性があるからだ。ただし、その柔軟性が経済的に見合うかは、未解決とする。

論考は、費用や削減額の実測値を示していない。例として、論考は3人が複数のシフトでトートを移していた作業を挙げる。ロボットが長い時間、確実にこの作業をこなせれば、人件費は下がり、作業の質も安定する。稼働が安定しないか、人の監督が多く残れば、効果は消える。評価すべき指標は、処理量、稼働時間、保守、例外への対応、導入の費用である。論考は、ロボットの作業を、在庫、人員、設備、輸送の予定、注文と整合させるには、WES、WMS、制御用のソフトが欠かせないとも書く。

出典 Logistics Viewpoints / 2026.10.19

← ブログ一覧へ戻る Photos: Unsplash  © 2026 GROUND Inc.