GROUND GROUND
Warehouse Tech Weekly
VOL. 27 2026.11.01

世界の物流施設テック 週次ニュース

Global Warehouse & Logistics Tech Digest

対象期間 2026年10月26日〜11月1日 Written by Tomo Miyata

今週は、物流自動化への投資と導入の動きを伝える5本を選びました。選んだ観点は、マテハンと人への作業指示を、どのソフトが担うかです。

ハイライトは、米Intelと独SAPが公開した実証である。SAPの業務ソフトで出した作業の依頼を、物流施設のロボットが実行する。Intelは半導体の大手、SAPは企業の基幹業務ソフトの大手だ。実証で使ったSAP EWMは、施設の在庫と作業を管理するソフト(WMS)にあたる。EWMに入れた依頼がロボットに届くと、ロボットが材料を運び、作業の状況と完了をEWMへ報告する。依頼から報告までは自動でつながっている。

物流施設では、WMSとは別に、作業の割り振りやマテハンへの指示を担うソフトを置くことが多い。注文をどの順番で作業に振り分けるかを決めるのがWES、施設内のマテハンに「次はどれをどこへ動かすか」を指示するのがWCSである。今回の実証では、EWMから届いた依頼を、どのソフトがどのロボットにどの順で振り分けるのかは明らかにされていない。成果としてIntelが挙げたのは搬送距離の短縮と繰り返しの手作業の減少で、数値は出ていない。

大型投資の発表もあった。米小売大手Walmartは10月29日、ロボットとAIによる自動化システムを手がける米Symboticとの協業を広げ、最初に約60億ドルを拠出すると発表した。対象は米国の地域配送センター25か所である。Symboticは保管から出荷までを一つのシステムで請け負い、Walmartはこの部分を1社に任せる形を選んだ。ソフトバンクグループ傘下の米Berkshire Greyは、自社ロボットを動かすソフトに、荷物の流れや人員配置を需要の変化に合わせて調整するAIを加えた。私が見ているのは、投資額よりも、施設全体への指示をどの会社のソフトが出すのかという点だ。

物流自動化事業の好調は、決算にも出ている。フォークリフトと物流自動化で世界大手の独KIONは、1〜9月期に物流自動化部門の売上高が16.9%増、調整後の営業利益が36.6%増となった。一方で、フォークリフトなどの部門は受注が想定を下回り、2026年の業績見通しを引き下げた。人型ロボット(ヒューマノイド)の導入は、まだ小規模である。米物流大手GXOは、米Agility Roboticsの二足歩行ロボットDigitを米国の2施設に追加する。同社のPatrick Kelleher最高経営責任者は決算説明会で、2026年に導入するロボット約2万台のうち、本格運用に入るヒューマノイドは0台だと述べた。費用に見合う成果もまだ出ていないという。この発言は、Martin Cid Magazineの報道による。

ロボット本体とそれを動かすAIモデルは、今後さらに入手しやすくなり、価格も下がると私は見ている。そうなると、施設の生産性を分けるのは次の2点になる。1つは、メーカーの違うマテハンと人に、1つのソフトで作業の順番と行き先を指示できるか。もう1つは、AIにどこまで判断を任せるかを、施設を運営する会社が線引きできているかである。例えば、Berkshire Greyの荷降ろしロボットは、人の対応が必要な荷物を検知する。その荷物をすぐ人に回すのか、作業の区切りまで保留するのか。基準を決めていなければ、荷物の行き先が決まらず、作業が止まる。

マテハンと人に指示するソフトがないままマテハンを増やすと、問題が出る。メーカーごとのソフトは他社のマテハンの状態を取り込めないため、マテハンからマテハンへの受け渡しで荷物が滞留し、作業が止まる回数が増える。Walmartのように、保管から出荷までを1社のシステムにそろえる方法なら、この問題は避けやすいと私は見ている。ただ、約60億ドルをかけて数年がかりで施設を作り直せる会社は多くない。IntelとSAPがロボットのメーカーを問わない構成にしたのも、複数メーカーのマテハンを使う施設にそうした需要があるからだと考えている。

GROUNDは、GWESを、他社のソフトを後から組み合わせるのではなく、マテハンと人の両方に作業を指示するソフトとして設計している。日本の物流施設は人手不足が深刻で、1つの施設で多品種の荷物を扱う。だからこそ、マテハンと人に作業を指示するソフトがあるかどうかが、生産性の違いとして表れると考えている。

GROUND Inc. — Founder & CEO 宮田 啓友

今週のニュース

Five stories
01 Lead story
物流施設のイメージ
物流施設内の設備(イメージ)。Photo: Unsplash

業務ソフトとの連携フィジカルAI米国・ドイツ

Intel × SAP — 物流施設の管理ソフトに入れた依頼をロボットが実行し、結果を報告する実証を公開

米半導体大手のIntelは10月28日、独業務ソフト大手SAPと共同で、物流施設のロボットが業務ソフトに入れた依頼を実行する実証を発表した。SAPのEWM(Extended Warehouse Management)は、物流施設の在庫と作業を管理するソフトである。実証では、EWMで作業を依頼すると、自律走行ロボットに依頼が届く。ロボットにはエッジAI(現場の機器側で動くAI)向けのIntel製ハードウェアとソフトが載っている。ロボットは材料を運び、作業の状況と完了をEWMに報告する。

SAPは、作業がどの業務に属するかという情報、承認の手順、作業のルールを担う。Intelは、ロボットが周囲を認識して経路を選び、自分で動くための技術を担う。両社によると、搬送距離が短くなり、繰り返しの手作業が減った。数値は示していない。実演はSAPの技術会議SAP TechEdで行った。

この構成は、ロボットのメーカー、OS、AIモデル、稼働環境(クラウドか自社設備か)を選ばない。Intelは、CPU、GPU、NPUを組み合わせた計算基盤と、OpenVINOなどの開発用ソフトを提供する。Intelの産業・ロボット部門の責任者John Healy氏は、AIを物理的な業務に直接つなげたいという顧客の要望に応えるものだと述べた。SAPでフィジカルAI(ロボットなど現実のマテハンを動かすAI)とロボティクスを統括するLukasz Ostrowski博士は、ロボットの基盤を選ぶ自由を残したまま、AIによる自動化を基幹業務に組み込めると述べた。両社は、この構成を、複数の拠点・ロボット・用途に展開できる標準構成にする方針である。

出典 Intel発表 / 2026.10.28

物流施設内の自動コンベアシステムを確認するオペレーター
Photo: Unsplash
02

大手の投資一貫型の自動化米国

Walmart — 米国の地域配送センター25か所の自動化で、Symboticとの協業を拡大、最初の拠出額は約60億ドル

米小売大手Walmartは10月29日、ロボットとAIによる自動化システムを手がける米Symboticとの協業を拡大すると発表した。最初の拠出額は約60億ドルである。米国の地域配送センター(店舗向けの商品を集めて仕分ける大型拠点)25か所に、数年かけて自動化設備を加える。Symboticは、Walmartの世界の物流網での追加の自動化も支援する。

Symboticの方式では、AIを使ったソフトが箱の保管場所を決め、高速の移動ロボットが保管と取り出しを行う。取り出した箱はパレットに積んで出荷する。Walmartによると、この設備を入れると、従来の地域配送センターより1時間に処理できるケース(箱)の数が2倍になる。2025年末時点で、店舗の約65%が、こうした高度な自動化を備えた配送センターから商品を受け取っていた。

Walmartは今回の協業とは別に、店舗に置く自動化拠点400か所分のシステムの購入と設置をすでに約束している。この拠点は、注文品の受け取りと配送に使う。Walmart米国のサプライチェーン運営を担当するRob Montgomery上級副社長は、今回の協業でサービスの向上、処理能力の拡大、従業員の作業の簡素化、費用の削減が進むと述べた。SymboticのRick Cohen会長兼最高経営責任者は、両社の関係は10年以上前の1商品の取引から始まり、いまはWalmartの供給網全体に一貫した提案ができるまでになったと述べた。

出典 Chain Store Age / 2026.10.30

コンベア上を流れる段ボール箱
Photo: Unsplash
03

指示ソフトフィジカルAI米国

Berkshire Grey — ロボットを動かすソフトBG Pilotに、荷物の流れと人員を調整するAIを追加

ロボットによる荷物の積み降ろしとピッキングを手がける米Berkshire Greyは10月29日、自社のロボット製品に搭載するAI機能を強化したと発表した。同社はソフトバンクグループの完全子会社である。強化のもとになったのは、同社のAIソフトBG Pilotだ。BG Pilotは、ロボットによる数十億回のピッキングの記録を使っている。記録は、同社が10年にわたる現場運用で集めたものである。顧客には、米物流大手FedEx、米スーパーのMeijer、米スポーツ用品通販のFanaticsがある。

強化は3つの製品に入る。トレーラー荷降ろしロボットScoopでは、画像と3次元データを同時に処理するAIが、トレーラーの壁の位置、障害物、人の対応が必要な荷物を検知する。店舗補充向けのStrideでは、需要、出荷の優先度、運用上の制約の変化に合わせて、AIが荷物の流れ、作業台への割り当て、人員配置を調整する。梱包向けのCoreでは、荷物の保護や取り扱いの条件も踏まえて、AIが箱の選択、荷物の置き方、隙間の少ない詰め方を決める。

同社は、新規の商談が過去6か月で65%超増えたと説明する。Dave Paratore最高経営責任者は、物流施設の自動化への需要とフィジカルAIへの関心の高まりが商談の増加につながっており、BG Pilotはその需要に応える基盤になると述べた。同社は、BG Pilotが荷物や梱包の種類の多さ、想定外の事態、人員の増減に対応できるとしている。以上は同社の発表による。

出典 Business Wire(Berkshire Grey発表) / 2026.10.29

物流施設のイメージ
Photo: Unsplash
04

決算物流自動化ドイツ

KION — 1〜9月期の物流自動化部門は売上高16.9%増、調整後営業利益36.6%増。フォークリフト部門の不振で通期見通しは引き下げ

フォークリフトと物流自動化で世界大手の独KION(自動化システム大手Dematicも傘下に持つ)は10月29日、2026年1〜9月期の決算を発表した。グループ全体の売上高は3.9%増の85億2,200万ユーロ、調整後の営業利益は9.9%増の6億3,250万ユーロ、営業利益率は7.4%だった(前年は7.0%)。

物流自動化部門(Intelligent Automation Solutions)は、売上高が16.9%増の25億1,900万ユーロ、調整後の営業利益が36.6%増の1億7,220万ユーロで、営業利益率は6.8%に上がった(前年は5.8%)。受注は25億7,500万ユーロで、前年同期より12.4%少ない。前年の第2四半期に大型案件の受注が記録的な水準に達していたためである。7〜9月の受注は、前年同期より1.4%多い7億5,080万ユーロだった。

フォークリフトなどの部門(Industrial Trucks & Services)は、売上高が0.7%減の60億3,400万ユーロで、受注が想定どおりに伸びなかった。KIONは、市場が伸びるなかで同部門の受注が追いつかず、とくに低価格帯の車両で出遅れたと説明する。KIONは10月14日に2026年の見通しを引き下げた。グループの売上高は、115億2,500万〜120億2,500万ユーロから114億5,000万〜117億5,000万ユーロに、調整後の営業利益は、8億8,000万〜9億8,000万ユーロから8億1,500万〜8億7,500万ユーロに下げた。物流自動化部門の見通しは、前回の範囲の内側に絞り込んだ。営業利益率を2桁にする中期目標の達成は、2027年より後になる見通しである。

出典 EQS(KION発表) / 2026.10.29

ロボットのイメージ
Photo: Unsplash
05

ヒューマノイド3PL米国

GXO — Agility Roboticsの二足歩行ロボットDigitを米国の2施設に追加、費用に見合う成果はまだ出ていないと説明

米物流大手GXOと、二足歩行のヒューマノイドロボットDigitを手がける米Agility Roboticsは10月26日、Digitを米国の2施設に追加すると発表した。場所はノースカロライナ州ステーツビルとテネシー州レバノンである。Digitは、ネット通販の出荷作業のうち、荷物を繰り返し移す作業を担当する。導入は2027年の初めに始まる。まず現行のDigit 4を使い、Agilityが9月に発表したDigit 5が市販されれば切り替える。

すでに稼働しているジョージア州フラワリーブランチの施設では、Digitが既存の自動化設備と並んで、トート(荷物を入れる容器)をコンベヤに載せている。Digitはこれまでに累計10万個超のトートを運んだ。GXOはロボットを購入せず、2024年6月に結んだ契約で借りている。ロボットを利用料で提供するRaaSという契約形態である。両社はこの契約を、人型ロボットの初の正式な商用導入だと説明する。ロボットの管理と施設の既存の運用との連携は、Agilityのクラウド基盤Arcが担う。Digitの累計稼働時間は、Agilityの全顧客合計で6万5,000時間を超えた。

両社は、2施設の費用も、採算が合う時期も公表していない。GXOのPatrick Kelleher最高経営責任者は直近の決算説明会で、これまでにヒューマノイドの試験を45件行ったと述べた。費用に見合う成果はまだ出ておらず、あと数年かかるという。2026年にGXOが拠点全体で導入するロボット約2万台のうち、本格運用に入るヒューマノイドは0台だという。以上はMartin Cid Magazineが報じた。Agilityは、特別買収目的会社(SPAC)のChurchill Capital Corp XIとの合併で上場する予定で、手続きは2026年第4四半期に完了する見込みである。

出典 The AI Insider / Martin Cid Magazine / 2026.10.26

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