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導入事例:RFID対応自律型協働ロボット『PEER SpeeMa+™(ピアスピーマプラス)』

日本初・RFID搭載の自律型協働ロボット『PEER SpeeMa+™』が「1/6の省人化」「ピッキングミス0」「未経験者でも熟練者と同様の生産性」を実現

小西医療器株式会社 様

GROUNDは、ダイオーエンジニアリング株式会社と共に、共同開発した自律型協働ロボット『PEER SpeeMa+™(ピア スピーマプラス)』を小西医療器株式会社の大阪ソリューションセンター(以下、大阪SC)へ導入し、同年6月より本格稼働させました。
小西医療器株式会社は、西日本エリアを中心に、医療用機器及び器具の販売や医療機関の経営課題をトータルサポートするサービス提供をしており、病院に代わって医療資材を管理する重要な役割も担います。同社は関西圏の基幹医療材料物流拠点となる大阪SCを新設し、2021年6月より本稼働を開始しています。
大阪SCは、包括的なRFIDシステムが全ての医療資材を管理し、先端のロボットソリューションや自動化設備と連携するなど、次世代型の物流施設として設計されています。
今回、大阪SCプロジェクト関係者の皆様に『PEER SpeeMa+™』採用の理由や導入効果について詳しくお伺いしました。

※:Radio Frequency Identificationの略。高度情報サービスのツールとして期待される自動認識技術の1つで、ICタグとも呼ばれる。ID情報を埋め込んだRFタグと呼ばれる媒体に記憶された人やモノの個別情報を、無線通信によって読み書きできる自動認識システム。

<『PEER SpeeMa+™』導入概要>

導入企業 シップヘルスケアホールディングスの小西医療器株式会社 様
業種 医療用機器および器具の販売
医療機関における経営課題のトータルサポートサービス
導入ロボット RFID搭載自律型協働ロボット『PEER SpeeMa+™』
導入時期 2021年3月
導入台数 5台
導入場所 大阪ソリューションセンター(大阪市門真市)

<『PEER SpeeMa+™』導入前と導入後の比較>

  • 導入前

    • ・医療現場の安全性確保のため、より高精度な資材管理が求められていた。
    • ・医療機関における経営環境の厳しさが増し、さまざまなコスト削減が必須だった。
    • ・出荷頻度の低い商品・資材は、人手によるオペレーションではノウハウが蓄積されにくく、ピッキングに時間を要し、ミスも生じやすかった。
  • 導入後

    • ・RFIDリーダーによる自動識別と、ロボットに搭載されているタブレットを用いた指示、ピッキング作業者の目視によるトリプルチェックで、従来ミスが発生していた作業オペレーションの質と精度を向上できた。
    • ・約1/6の省人化を実現
    • ・作業者の経験や熟練度に関わらず、ピッキングミス0のオペレーションに可能となった。
    • ・育成・教育コスト削減に寄与した。

<お話を伺ったお客様>

  • 小西医療器株式会社 ソリューション事業本部 情報戦略企画部 部長代理 吉田 記大 氏

    小西医療器株式会社

    ソリューション事業本部 情報戦略企画部 部長代理

    吉田 記大 氏

    医療機関の資材物流管理と経営改善の支援まで含めてトータルにサポートする院内物流管理システム(以下、SPD)ソリューション部門に所属。大阪SCの企画、立ち上げのご責任者様。

  • 小西医療器株式会社 ソリューション事業本部 情報戦略企画部 課長補佐 清水 俊博 氏

    小西医療器株式会社

    ソリューション事業本部 情報戦略企画部 課長補佐

    清水 俊博 氏

    吉田様と同じくSPDソリューション事業部門に所属。大阪SC立ち上げに参画する多くのメーカーとの交渉、調整、プロジェクト進行管理をご担当。

  • 小西医療器株式会社 ソリューション事業本部 情報戦略企画部 課長補佐 太田垣 誠 氏

    小西医療器株式会社

    ソリューション事業本部 情報戦略企画部 課長補佐

    太田垣 誠 氏

    大阪SCの立ち上げに途中から参加。ITを中心としたプロフェッショナルな知見を活かし、医療従事者へのRFIDを使ったSPDソリューションの提案、大阪SCの更なる高度化に向けた取り組みなどをご担当。

コスト削減と作業オペレーションの精度向上を両立させることが課題

コスト削減と作業オペレーションの精度向上を両立させることが課題

――『PEER SpeeMa+™』導入以前に貴社が抱えていた課題を教えてください。

吉田氏:弊社は、西日本を中心とした医療機関に医療資材を提供している卸・メーカー売業者です。現在では、商品を医療機関に届けるだけでなく、医療資材の物流管理から経営改善の支援まで、包括的にお客さまをサポートする院内物流管理システム(以下、SPD)も提供しています。SPDとは病院に代わって医療資材の在庫管理を行なったり、その使用期限などを一元管理することによって、病院側にかかる負担を低減できるよう一緒に経営改善に取り組むソリューションです。

病院との契約は一般的に3年で満了するのですが、契約更新の度にライバル企業と厳しい価格競争があり、付加価値のある提案をしなければなりません。また、医療資材は2年に1度、償還価格(公的医療保険制度にて医療機関が診療報酬として保険機関に請求できる代金)が改定され、これが下落し続けているため、病院および医療資材卸の経営環境は厳しさを増す一方なのです。こういった競争を勝ち抜き、利益を生み出していくためには、どうしても業務の合理化やコスト削減が欠かせません。

これまでの倉庫は人がハンディターミナル端末を頼りに商品をピッキングする、というアナログなオペレーションで運営していました。物流のピッキング工程にかかるコストのうち、約6割は人件費だったので、人による手作業をいかに効率化・デジタル化できるかが事業全体の合理化やコスト削減の最大の焦点でした。さらに、医療資材のピッキングミスは、結果的に医療を受ける患者様の命にかかわります。従って、ピッキング工程にかかるコストは下げつつ、作業オペレーションの質と精度を高める必要がありました。

そこで、私たちは先端テクノロジーや省人化・自動化設備を活用した大阪SCを立ち上げることにしました。ピッキング工程をはじめ、倉庫内の作業オペレーションをできるだけ人手に頼らず、かつ精度の高い出荷品質を保証できる体制には必要不可欠だと思ったからです。ただ、私たちはITや医療についてのプロフェッショナル集団ですが、こういった次世代型物流施設の構築、先端テクノロジーや自動化ソリューションについては素人です。先進的な物流システムを取り入れた倉庫の立ち上げに協力してくれるプロフェッショナルなパートナーが必要でした。

オペレーションが最も難しい低頻度出荷商品のピッキングに『PEER SpeeMa+™』を採用

オペレーションが最も難しい低頻度出荷商品のピッキングに『PEER SpeeMa+™』を採用

――『PEER SpeeMa+™』導入にいたった経緯と背景をお聞かせください。

吉田氏:大阪SCをオープンイノベーションで技術検証する機会にしたいと考えていた私たちは、複数のメーカーにご提案をお願いしました。

大阪SCでは、数万点におよぶ品目を出荷頻度ごとに高頻度、中頻度、低頻度の3つに分類して保管しています。高頻度品はA社、中頻度品はB社というように担当を振り分け、それぞれの課題に応じたプロジェクトを立ち上げました。普通はこうしたプロジェクトのマネジメントを大手のシステムインテグレーターさんに委託する場合が多いのですが、弊社は自社での構築にこだわりました。各プロジェクトに最もふさわしいと思う相手に直接お願いしたかったからです。

高頻度品とは1回のピッキングで20箇所以上の施設に毎日出荷されるような商品を指し、これは約150品目程度です。ここでは、対象商品が格納されている棚ごと作業者のところに搬送される自動化設備を取り入れました。中頻度品は3日に1回くらい発送される商品で、約8000品目あります。これはセンサーや電波によって在庫確認する仕組みを取り入れました。

一番頭を抱えたのが低出荷頻度商品でした。1〜2ヶ月に数回くらいの頻度で出荷する商品ですが、緊急手術のような用途に使われるものも多く、商品を間違えると重大な医療事故につながりかねません。しかも出荷頻度が少ないことで、スタッフがその商品を覚える機会が少なく、探すのに手間がかかるだけでなく、ピッキングミスも発生していました。この低出荷頻度商品に対して、なかなか適切なテクノロジー提案をしてくれる企業がいない中、ダイオーエンジニアリング社がGROUNDと共同開発した、RFID搭載の自律型協働ロボット『PEER SpeeMa+™』を提案してくれたのです。
私たちが自社の物流・流通全体において、包括的なRFIDシステムをいち早く取り入れていた背景もあり、『PEER SpeeMa+™』との連携、親和性はとても高いと感じましたし、自律型協働ロボットの先進性やフレキシブルさに魅力を感じ、採用に至りました。

RFID、ロボットに搭載されたタブレット、作業者の目視によるトリプルチェックでピッキング精度が飛躍的に向上

オペレーションが最も難しい低頻度出荷商品のピッキングに『PEER SpeeMa+™』を採用

――『PEER SpeeMa+™』を活用し、具体的にどのようなオペレーションを実現しているか教えてください。

清水氏:まず、各資材が入庫したら、商品一点一点にRFIDタグを貼付した後に棚に保管します。『PEER SpeeMa+™』は、倉庫管理システムなどと連携しているので、自ら発注情報と在庫情報をもとに、商品が保管されている棚の前まで自律的に移動し、停止します。停止した後、ロボットは天井にライトを照射して居場所を知らせ、同時に搭載されているタブレットに「どの商品をいくつピッキングしなければいけないか」写真とともに提示してくれます。作業者は、停止しているロボットを見つけ、タブレット画面に表示された情報や写真などを見て、棚から対象商品を必要な数だけピッキングし、ロボットに設置されたバスケットに入れます。すると、全ての商品に貼付されているRFIDタグをロボットのバスケット内に搭載されているRFIDリーダーが読み取り、正しい商品が必要な個数入れられたかどうかを瞬時に判別して作業者に知らせます。
従って、ロボットのタブレットでの指示、RFID、作業者の目視というトリプルチェックのオペレーションとなり、ピッキングの精度と効率を大幅に向上できるのです。
正しい商品がバスケットに入ると、ロボットは次にピッキングしなければならない商品のある場所へまた自律的に移動していき、作業者はその後を追いかけるのではなく、また停止しているロボットを探し、商品ピッキングを行います。作業者がロボットを追従しなくても良い、つまり、ロボットが商品をピッキングする作業以外は自己完結できる仕様になっていることで、生産性も向上します。

開発、提案、導入・運用支援サービスまでをワンストップ提供

開発、提案、導入・運用支援サービスまでをワンストップ提供

――ダイオーエンジニアリング社とGROUNDを評価している点を教えてください。

吉田氏:私たちが理想とする仕組みを作り上げるために、ダイオーエンジニアリング社とGROUND社のチームは、ニーズを汲み取り新しい提案を重ねてくれました。両社とも専門領域におけるリーディングカンパニーであり、先端テクノロジーを物流に応用する能力に長けていることが心強かったです。両社が大阪SCのシステムやレイアウトに合わせて実証を繰り返してくれたおかげで、弊社のニーズや作業オペレーションに合致した形で『PEER SpeeMa+™』が実稼働しました。ロボットを稼働させるためには、裏側でさまざまなシステムとの連携や、ロボットと人が安全に作業できるインテグレーションなど、本当に多くの専門性、ノウハウ、技術力が必要になります。他社にこのような開発、提案、導入・運用支援サービスまでのワンストップ提供は期待できなかったでしょう。

清水氏:『PEER SpeeMa+™』導入・立ち上げの際、弊社側では大きなトラブルがなく、両社に安心してお任せできた点です。唯一の懸念点は、ロボットが動くエリアの通路幅の調整くらいでしたが、『PEER SpeeMa+™』は期待以上に狭い通路でも難無く走行し、障害物を回避するなど柔軟に稼働してくれています。RFIDとロボットの連携は、両社でこそできたことだと思います。

特別コラム:『PEER SpeeMa+™』共同開発秘話

  • ダイオーエンジアリング株式会社 エンジニアリング本部 ICTソリューション部 部長 井川 太郎 氏

    ダイオーエンジアリング株式会社

    エンジニアリング本部 ICTソリューション部 部長

    井川 太郎 氏

    同社が開発した包括的なRFIDソリューション『SpeeMa』事業のご責任者様。
    大阪SC立ち上げプロジェクトに参画するとともに、GROUNDと共同開発した『PEER SpeeMa+™』の提案と導入のご責任者様。

  • ダイオーエンジアリング株式会社 エンジニアリング本部 営業部 ICTソリューション営業課 チームリーダー 松本 航明 氏

    ダイオーエンジアリング株式会社

    エンジニアリング本部 営業部 ICTソリューション営業課 チームリーダー

    松本 航明 氏

    大阪SC立ち上げプロジェクトに参画。『PEER SpeeMa+™』導入プロジェクトをはじめ、小西医療器株式会社様への営業全般をご担当。

弊社は大王製紙グループのエンジニアリング子会社として、工場設備の設計や施工のほか、ICチップを搭載したカード検査機器や、RFIDソリューション「SpeeMa」の開発・提供をしており、小西医療器様とは20年来のお取引がありました。
今回、大阪SC立ち上げについてご相談いただいたのをきっかけに、弊社のRFIDソリューション「SpeeMa」と次世代型ロボットとして注目を集める自律型協働ロボットを掛け合わせたご提案ができないかと、GROUND社に相談しました。GROUND社の事業には数年前から注目していたのです。
この時、物流のピッキング工程で活躍できるRFID対応の自律型協働ロボットは、国内市場では存在していなかったように思います。両社のソリューションを掛け合わせることで、とても先進的なプロダクトを生み出すことができ、市場への訴求力も高いと判断し、『PEER SpeeMa+™』の共同開発に至りました。
小西医療器社のご支援もあり、『PEER SpeeMa+™』を実証実験にとどまらず、実稼働させられたことをとても嬉しく思っています。
今後も、GROUND社とは良いパートナーとして互いの強みとノウハウを共有し、『PEER SpeeMa+™』の提供を通じて物流改革という社会課題に共に取り組んでいきたいと思います。